20200417 鶏のクリーム煮

香水が好きで、たま〜に百貨店へ行った時は絶対に香水売り場へ行く。

瓶の見た目に惹かれたものや名前が気になったもの、売り出し中のものなど気になった香水を次々に試す。

もちろんだんだん鼻が利かなくなってくるので、そうなったら大体満足して、お気に入りだけど自分でつけるのは違うんだよな〜といういつもの香水をふんわりと嗅いで店を後にする。

 

初めてそういうお店へ行ったのがいつのことだったかもう忘れてしまったけれど、嗅覚をリセットするためのコーヒービーンズの香りを嗅いで「ねー!これコーヒーの匂いの香水!」と友達と盛り上がったのも今ではいい思い出だ。

 

何回も色々なお店へ行くにつれて、初めのうちは緊張してお店の人とうまく会話出来なかったのが、今では自分の好みを伝えてそれに合致するようなオススメを聞くのが楽しみのひとつになっている。

 

何ヶ月か前(もしかしたらもう1年くらい経つかも、、)に新宿のnose shopへ行った時も、気さくな店員さんたちと楽しく会話しながらたくさんの香りを嗅いだ。(nose shopは今まで見たことも聞いたこともないような香水がたくさんあって、何回行っても毎回楽しいです。)

そのうちのふたつを右手首と左手首それぞれにふりかけ、一緒にいた恋人も自分が気になったふたつを同じように左右の手首にふりかけて満足して店をでた。

そのままエスカレーターに乗り、昇りながらお店を適当に見ている時にわたしは強い違和感を覚えた。

 

「なんかめちゃくちゃいいにおいする」

 

どこからくるのかわからないけれど、なんだかめちゃくちゃいい匂いがする。いままで嗅いだことのない、とにかくめちゃくちゃいい匂いがする。

洋服屋や家具屋でオリジナルの香りで店内をみたしているところもあるけど、お店を変えても、同じめちゃくちゃいい匂いがずーっっとしている。ここで、その匂いが恋人からすると気づいた。もともとの体臭とか、今日つけてきた自前の香水の香りではないそれは、恋人の右手首からしてくるものだった。

nose shopじゃん。さっき試したやつじゃん。

 

お店に戻って店員さんに、「今試したやつめちゃくちゃいい匂いなんですけど、わたしも試してみていいですか?」と言って右腕の上の方につけてもらった。

店員さんも、「これめちゃくちゃいい匂いですよね!」と言っていたので「ですよねー!!」と盛り上がって店をでた。

気軽に手を出せる金額ではなかったし、時間が経った時の香りの変化・自分の体臭との相性が気になったのでその日は買わなかった。

 

腕がいい匂いすぎて、何度もなんども嗅いだことを覚えている。

ラストが少しウッディ?すぎるけれど、そこに至るまでの匂いがめちゃくちゃいい匂いで、絶対に買う。と決めた。

でも金額が金額だし、衝動買いみたいにしたくなかったので、なにか自分をお祝いできるような機会があったら買う。と心に決めた。

 

転職をしたいと思うようになって、就職が決まったらあの香水を買おう。そのためにも就職活動頑張ろう。とやってきたが、自分が思っていたよりも不穏になった世の中でそううまくいくこともなく、なんなら来月からは無職になる。

 

今日の帰り道、誰もいない家の前の道を歩きながらマスクをはずした。一週間し続けたマスクのせいで、耳の付け根がもう限界の痛さだった。

はずした瞬間、世界はこんなにもたくさんの香りに溢れているんだと毎回驚く。

なにがそう思わせたかわからないけど、マスクをはずした瞬間の匂いがあの香水と似ていてとても高揚した。

 

今のわたしには過ぎ物だな、とは思ってしまうけど、前のように自由に出かけられるようになってお店も自由に営業するようになったら、絶対にあの香水を買いに行こう。

あの匂いにふさわしい自分になるためのことをする、身にまとえる日を楽しみに待ちながら。